2008年08月18日

笑劇、いや衝劇

日曜は大人計画の舞台「女教師は二度抱かれた」を観に行ったぴかぴか(新しい)
場所は渋谷Bunkamuraシアターコクーン。初めて行く劇場だ。

大人計画の舞台を観るのは2年前の本多劇場での本公演「まとまったお金の唄」以来、久々だ。
過去、シアターコクーンで上演した「キレイ〜神様と待ち合わせした女〜」と「ニンゲン御破産」はビデオとWOWOWで観たけど、コクーンで生で観るのは今回が初めて。

率直に言って、すごくいい舞台だったグッド(上向き矢印)
松尾スズキの才覚はまだまだ健在だと思った。

ストーリーは、演劇界における人間達の奇妙なドラマを描いたもの。
演劇界の風雲児と評されて注目を浴びている天久六郎(市川染五郎)は、歌舞伎界の異端児と呼ばれている歌舞伎役者・滝川栗乃介(阿部サダヲ)と手を組んで、新たな現代歌舞伎を上演しようと息まいていた。その二人の新たな試みに、世間からの期待が集まる。
そんな矢先、天久の恩師である山岸諒子(大竹しのぶ)が現れる。彼女は高校時代の演劇部の顧問教師だった。

諒子はかつて、教師になる前は女優を目指していたが、志し半ばで夢に破れた女だった。
諒子の演劇指導を受ける内に天久は彼女に強く惹かれ、抑えきれない気持ちが募ってついに身体の関係を持ってしまう。
だが、諒子は良家の御曹子と婚約していた。天久との仲が知られ、婚約は破棄になり、教師も辞めさせられる。

そんな諒子との再会に、ひそかに恐れおののく天久。しかも諒子は何と、天久と滝川が上演する舞台に自分を女優として出演させてほしいと懇願してくる。
彼女はもはやかつての女教師ではなかった。どこか危うい精神状態を示す諒子に戸惑う天久。
しかも、滝川が起こした「ある事故」のせいで、諒子を起用せざるを得ない状況になっていく。
天久の劇団内に渦巻く期待と思惑、滝川の付き人や取り巻きのオカマ達を巻き込んでのややこしい奔走、天久と諒子の過去と現在。
全てが繋がり合う中、天久と滝川の舞台はどうなるのか?天久と諒子は過去と己の夢に対してどうするのか?迷える心は何処へ向かうのか?


「キレイ」「ニンゲン御破産」のようなスケールの大きな物語とは違い、今回は二人の男女の仲と、それを取り巻く周囲の人間達という限られた範囲の世界を舞台にしている。小劇場的な原点をコクーンのような豪華な舞台装置を持つ劇場向けにアレンジしているけど、チグハグ感はない。

夢と性に焦がれる気持ち。それはメルヘンチックな側面だけでなく、心を患わせ人を狂気へといざなう危険な側面をも持っている。
夢に叶えつつある天久と、夢に引きずられたまま闇をさ迷う諒子の対比。
そんな二人が、互いに別の形で心の奥に留めている一度きりのセックスの記憶。それこそが二人にとっての大いなる分岐点だった。
夢と性、正常と狂気。それにまつわる可笑しさや切なさが物語を逆説的に盛り上げていく。

市川染五郎と大竹しのぶは特に好きな役者でもなかったけれど、この舞台では二人の凄さを充分に知る事ができた。
一見、端正な若手歌舞伎俳優の染五郎が松尾スズキの独特な演出に彩られ、滑稽さやコミカルな面を出し惜しみなく出してくる。それはそのまま状況に翻弄される天久のキャラと重なって、半ドキュメント的なリアルささえ醸し出す。
大竹しのぶもこうゆう諒子のような「痛い女」の狂気を表現するのがとにかく上手い。物語が進むにつれてあらわになる諒子の危うい内面に、怖さをぞくぞくと感じる。

そして、相変わらず強者揃いな大人計画の役者達。
破天荒な歌舞伎役者を演じる阿部サダヲは、まさにサダヲ節とも言うべき飛び道具的演技で物語を牽引する。
荒川良々の独特な間を活かしたキャラ表現、こってり濃い味のスパイスを効かせる皆川猿時、小者を演じれば実に秀逸な村杉蝉之介、浅野温子の絶妙なモノマネを混ぜて得体の知れない色気を見せる池津祥子、やっぱり可愛くて引き込まれそうな雰囲気を持つ平岩紙などなど。

最近、僕の奥さんが阿部サダヲや近藤公園の次に惹かれつつある星野源も、不気味さたっぷりの役作りだけでなく、味わい深い劇中音楽までも担当する。しかも、その音楽を舞台後方のステージにいるバンドが劇に合わせて生演奏するという豪華っぷり。

他の客演者達も良い。市川実和子に浅野和之。市川は天久のマネージャー役で、心配性で常に事の成り行きに身も心も細らせる一方、DVの傾向がある恋人(星野源)に依存している脆い女性。そして、最近まで毎週「ROOKIES」で頼れる教頭先生を演じていた浅野和之が、重要なキーマンである諒子のマネージャー役を強烈なインパクト込みで熱演する。
もちろん、演出家松尾スズキ本人も要所要所で奇異なキャラを演じて場内をしっかりと沸かせる。

いつもの絶妙な台詞回しと役者のアンサンブルで繰り出す笑いはやっぱり小気味いいし、さり気なく時事ネタや流行りの言葉(はるな愛のフレーズとか)を小馬鹿するようなシニカルさを混ぜて放つところも僕好みわーい(嬉しい顔)
そして、観てて目に涙が潤むような切なさと、ある視点で見ればハッピーにもアンハッピーにも転じるオーラスを迎えて物語は終わる。終劇後のカーテンコールで、僕はいつまでも拍手を送っていたかった。

病気による活動休止や離婚という沈痛な出来事を経ても、松尾スズキは人間が内面に抱える業とかややこしさに、目を向ける事を止めない。そしてそこに笑いやシニカルさを織り交ぜる事を頑固に続けている。
そんな表現姿勢に、どうしても惹かれてしまう。

奥さんと二人で大きな息をついて、コクーンを出た。
映画もいいけど、演劇もやっぱりいいねダッシュ(走り出すさま)
時々小雨が降り、久しぶりに涼しい一日になった日曜でした。
posted by トモ at 21:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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